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言語と心理の要点とひっかけ(日本語教員試験 論点テキスト)
出題区分「言語と心理」にあたる6論点を、要点43本・ひっかけ27本にまとめました。
最終更新:2026年10月25日
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このページの論点
<14> 談話理解
談話能力、読みのボトムアップ・トップダウン・相互交流の各モデル、スキーマ、会話の構成、文法と談話の関係が問われる。
要点
- 推測や予測のストラテジー能力は、全体の意味を理解した後に文や語彙の学習へ進むトップダウン式の教え方で育てやすい。
- 談話能力は、話の始め方・終え方に加え、筋道を通して話し続け、複数の話を関連付ける力である。
- ボトムアップ・モデルは小さい単位から大きい単位へ読み進めると考え、相互交流モデルはトップダウンとボトムアップを状況に応じて切り替えると考える。
- ことばの知識が少なく内容の知識が多いときはトップダウンの読み方が働き、逆のときはボトムアップが使われる。
- スキーマは、一人ひとりの頭の中に整理され構造化された知識や情報で、新しい情報や経験によって作り直され、予測や推測に使われる。
- 読む目的が具体的なときは必要な情報を探すトップダウンの読み方、要約や正確な理解が目的のときはボトムアップの読み方が使われる。
- 自然な会話は、会話の始まりの部分、言いたいこと、会話の終わりの部分の三つからなる。
ひっかけ
- 予測や推測によってテキストに働きかけると考えるのは、ボトムアップ・モデルではなくトップダウン・モデルである。
- 談話は対面の会話や話し言葉に限られず、コミュニケーションのために言葉を使うこととして書き言葉も含める立場がある。
- 文レベルの制約と見られてきた現象も、談話での使われ方を調べると、文の機能に起因した制約であることがわかる。
- スキーマは正確な理解を導く働きに限られず、誤解の原因にもなる。
<15> 言語学習
タスク先行型やディクトグロス、インプット仮説の影響を受けた教授法、ピア・ラーニング、CLIL、トランスレーション活動が問われる。
要点
- タスク先行型は、既習の項目が実際に使える段階にあるか、さらに必要な項目は何かを学習者に意識させるための活動である。
- インプット仮説の影響を受けた教授法には、ナチュラル・アプローチやTPRがあり、産出より理解を優先する理解優先法と呼ばれる。
- ピア・ラーニングの目的には、課題を遂行してスキルを向上させる狭い意味と、仲間と学んで自分自身を発見する広い意味の二つがある。
- 教師の質問、学習者の反応、教師の評価という教師主導の展開はIREと呼ばれ、学習者同士の主体的な学びが生かされにくい。
- 言葉を教えることの捉え方は、言語構造の知識の伝達から、コミュニケーションができるようにすること、さらに自律的な学びの支援へと移ってきた。
- CLILでは、記憶・整理・定義・ふり返りが低次の思考スキル、推論・問いかけと話し合い・創造・評価・仮説形成が高次の思考スキルである。
ひっかけ
- トランスレーション活動に期待される効果に、母語の使用を抑えて日本語力を高めることは含まれない。
- 学習者の母語の感覚を利用した説明は、母語の干渉を誘発しないのではなく誘発しかねないため、慎重に行う必要がある。
- オーディオリンガル法やディクトグロスは、インプット仮説の影響を受けた教授法ではない。
- 考えを相手にわかるように示すことは内省ではなく外化であり、内省は自分自身の状況を再評価して新たな解釈をする行為である。
<16> 習得過程(第一言語・第二言語)
第二言語習得の各仮説、中間言語、児童生徒の母語と日本語の関係、音声習得、継承語教育やJSLカリキュラムが問われる。
要点
- インプット仮説は、学習者の現在の能力をわずかに上回る「i+1」の理解可能なインプットを習得の重要な資源とみなす。
- インターアクション仮説が挙げる意味交渉のストラテジーは、明確化要求・確認チェック・理解チェックの三つである。
- アウトプット仮説が挙げる機能は、気づきの機能、仮説検証の機能、メタ言語の機能の三つである。
- 気づき仮説は、インプットの内容を理解するだけでなく、そこに含まれる言語形式に注意が払われてはじめて習得に結びつくと考える。
- 中間言語は、学習者が第二言語として構築している、母語とも目標言語とも異なる独自の言語体系である。
- フォーカス・オン・フォームは、意味に焦点を当てた活動の中で、付随的に学習者の注意を言語形式へ向けさせる指導法である。
- 生活言語能力はある程度生活の中で身に付くが、学習言語能力は生活の中で身に付くことをあまり期待できず、教師による計画的な支援が要る。
- 母語と日本語では、認知的・学問的な側面を支える深層面の力は共有され、発音・語彙・文法などの表層面の力はその言語で学ぶ必要がある。
- 低学年で来日した児童は、母語の習得の促進か日本語の教育をしっかり行わないと、どちらの言語も思考する力が未発達になり、教科学習にも負の影響が出る。
- JSLは、日本語を外国語ではなく生活のための第二の言語と捉える考え方で、日本語を学ぶことは日本で暮らすことを学ぶことでもあるとする。
ひっかけ
- まとまった内容を伝える力や読み書きの力は、友人同士の日常のやり取りでは強化しにくく、計画的な日本語指導が要る。
- 深層面の力は小学校入学前までに発達し終わるのではなく、小学校の高学年ぐらいまでに発達すると言われる。
- 特殊拍は自立拍より単純なのではなく有標と考えられ、日本語を母語とする幼児でも獲得が遅れる。
- 日本語ができない子どもは、母語や日常的に使う言語に十分な力があると捉え直すべきで、日本語を基準にマイナスにとらえてはならない。
- 母語で説明すれば教科内容の理解が円滑に進むとは限らず、低学年では母語の力自体が十分に育っていない場合がある。
<17> 学習ストラテジー
ポートフォリオと自己評価、学習者オートノミーとアドバイジング、読みのストラテジー、社会的文脈の三つのレベルが問われる。
要点
- JF日本語教育スタンダードのポートフォリオは、【評価のものさし】【学習の記録】【学習の成果】の三要素からなり、【学習の成果】は学習の証拠となる成果物を収める。
- 聞き取れなかった単語を文脈から推測するのは、推測したり聞き返したりして困難を切り抜けるストラテジー能力にあたる。
- 学習者オートノミーとは、自分の学習に関する意志決定を自分で行うための能力であり、その能力を使う権利である。
- 学習者オートノミーの行使は、目標設定、計画、実行、評価のサイクルを繰り返すことである。
- アドバイザーの役割は、サイクルを作るのを助けること、言語学習のノウハウを提供すること、動機の維持を助けることの三つである。
- 学習を支える社会的文脈は、マクロが制度、メゾが周囲の他者との関係におけるアイデンティティ、ミクロが会話の相手の対応という三つのレベルに分けられる。
ひっかけ
- アドバイザーは学習者の学習方法を決めて指示するのではなく、自分の考えを押しつけない。
- 学習者の考えがうまくいきそうにないときも、途中で割り込んで指示せず、黙って待ち、傾聴し、承認する。
- 大事なことばに注目し、くわしく正確に読むのはトップダウンではなく、ボトムアップ・モデルの読み方で使うストラテジーである。
- 教師主導に慣れた学習者には、教師が全員に同じ目標を示すのではなく、学習相談や学習者どうしのふり返りで目標と評価を具体化させる。
- 学習の振り返りを記述して読み返し、自律的な学習能力を育てることを目的とするのは、試験やパフォーマンス評価ではなく自己評価である。
<18> 異文化受容・適応
外国人児童生徒の適応の時期と、受入れ側の担任の姿勢・異文化への対応・居場所づくりの考え方が問われる。
要点
- 日本の学校に編入した直後は、まず適応して安心して過ごせる「居場所」が確保されることが重要で、安心感があってはじめて学習への構えができる。
- 「個人の内省→共有→再内省」のサイクルは、さまざまな角度から言語や文化を捉える柔軟な視点を養い、ステレオタイプ化の防止にもなる。
- 来たばかりの児童生徒の適応は、不安と期待の時期、居場所を探す時期、調和を求められてとまどう時期、相互理解で学級の一員となる時期の順に示される。
- 居場所を探す時期におとなしい児童は孤立しやすく、担任は個性や趣味、特技を把握して活動や遊びの場面に誘導し、友人関係の形成を支援する。
- 調和を求められてとまどう時期のトラブルの多くは母文化と日本の文化の違いに起因し、担任は理由を認識して本人にも級友にも異文化を受け入れる心が育つよう指導する。
- 名前は個人のアイデンティティの根源であり、本名をしっかり確認して書類等に記入する(してもらう)ことが重要である。
- 受け入れる側の見方が異文化理解の出発点であり、教員は転入児童の気持ちを説明して誤解を解き、マイナスの見方をプラスに変える手助けをタイミング良く行う。
ひっかけ
- 母語の使用を控えさせて日本語で過ごす時間を増やすのではなく、まず居場所の確保が先で、母語・母文化に誇りを持てる配慮も求められる。
- 日常会話ができるようになったから言葉の問題は解決したと判断するのではなく、友人関係の形成など学級での人間関係への配慮を続ける。
- 級友が同調を求めるからと積極的な発言を控えさせるのではなく、担任は関わって、理由を認識したうえで双方を指導する。
- 外国人児童生徒等も日本の児童生徒と同じに扱う形式的な平等主義は安全ではなく、必然的に起きる問題に何の配慮もしない極めて危険なやり方である。
- 母語や母文化に触れる機会を設けないのは配慮の方向と逆で、母語・母文化教育や日本人児童との交流はアイデンティティの形成に配慮するものである。
<19> 日本語の学習・教育の情意的側面
ビリーフ・動機づけ・やる気の維持・複言語使用への思いなど、学習者の情意的な個人差要因の理解が問われる。
要点
- ビリーフは言語学習についての信念や思い込みで、学習ストラテジーや動機づけ、習得とも関連する個人差要因として取り上げられる。
- アウトプット仮説は、産出の際に生じる「どう言えばよいか」という疑問を、言いたいことと言えることのギャップへの気づきを促す鍵と捉える。
- 動機づけに関する信念には、期待、自己効力感、統制観、価値、学習動機、達成目標が含まれる。
- 豊かさ志向は、学習者の精神面の充実を重視し、文化、興味、楽しさなど豊かさの教授に関係する志向性である。
- やる気の維持には、「理想の私」を具体的に描き、なれると思い、「あるべき私」と矛盾せず、思い出す手がかりと近づく方法がある条件が示される。
- 学ぶ理由があることと実際に学習活動を継続的に行うことは別の問題であり、やる気の維持には理由以外の要因が必要である。
- ハワイの高校の生徒の複言語使用への思いには、ポジティブなものとネガティブなものが共存し、他者との関係性や眼差しが影響していた。
ひっかけ
- 不安を産出の機会を減らす理由にしたり産出を後回しにしたりする方針はアウトプット仮説の見方と逆で、不安や疑問こそ習得の鍵になるとされる。
- ことばの構造に関する指導や知識を重視する「正確さ志向」と、精神面の充実を重視する「豊かさ志向」を混同しない。
- 「理想の私」と食い違う「あるべき私」を優先して学習を進める状態は、やる気の維持が可能になる条件に当たらない。
- 知能観や授業観は動機づけではなく学習の成立過程に関する信念で、認識的信念は知識の性質に関する信念に分類される。
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