日本語教員ウカール > 日本語教員試験ガイド > 論点テキスト
言語の要点とひっかけ(日本語教員試験 論点テキスト)
出題区分「言語」にあたる14論点を、要点116本・ひっかけ62本にまとめました。
最終更新:2026年10月25日
※本ページはアプリ製薬が独自に作成した非公式の読み物です。文部科学省とは関係がなく、文部科学省の公式教材・サンプル問題の転載でもありません。記載内容は執筆時点のアプリ収録データをもとにしており、正確性・最新性を保証するものではありません。 試験の出題範囲・出願・日程の情報は、必ず文部科学省のページでご確認ください。
このページの論点
<37> 一般言語学
音素・文法の性質・言語と方言・語順・文字の種類・ピジンとクレオールなど、一般言語学の基本的な概念が問われる。
要点
- 音素は、人が聞き分けられる最も小さな音で、意味の違いを生み出す音の単位である。
- 文法は、観察から構築された記述的なルールで、先にことばがあり、あとからその仕組みを見つけたものである。
- 言語の数に三千から七千の幅が出るのは、言語と方言を区別する客観的な基準がなく、話者の意識に左右されるためである。
- 生まれて最初に習得する言語を母語や第一言語と呼ぶのは、言語と国家は同一視できず、国と言語は必ずしも対応しないためである。
- 約3,000言語の基本語順は、SOVが最も多く、SVO、VSO、VOSの順で続く。
- 漢字は表語文字、仮名は音節文字、ローマ字は単音文字に区分される。
- ピジンからクレオールへは、民族の接触、ピジンの発生、ピジンを母語とする世代の出現、クレオールとなる、の順に進む。
ひっかけ
- 国と言語は1対1で対応するのが通例なのではなく、国という単位と言語という単位が一致しないことが世界ではごく普通である。
- 日本語は整合的OV型で、形容詞を名詞の後ろに置くのではなく、名詞の前に置く。
- 言語類型論は、特定の言語の祖語を再建する分野ではなく、世界諸言語のデータを基に類型化を通じて言語普遍性を探究する分野である。
- 標高や橋の長さ、窓の数のように事実を述べる文は、喚情的ではなく象徴的な用法である。
<38> 対照言語学
対照言語学として、母語干渉の現れ方や、日本語と他の言語の音声・敬語・難しさの比べ方が問われる。
要点
- 母語の表現を一語ずつ置き換えた誤りは母語干渉で、中国語では修飾語との間に「的」が必要なため「タバコを吸うの人」が生じたと考えられる。
- 日本語のあいさつには場面ごとの定型の決まり文句があるが、英語では定型表現が多くなく、その場にふさわしい表現を当事者が考え出すのがよいとされる。
- 日本語で意味を区別する発音でも、学習者の母語で意味の区別に使われなければ区別しにくく、中国語や韓国語の母語話者には「タ」と「ダ」の清濁が難しい。
- 相対的な難しさは学習者の母語に左右され、日本語に似た構造の言語が母語の人には学びやすい。
- 日本語の「ば」と「ぱ」は声帯の振動で区別され、息の強さで区別する母語の学習者は息をほとんど出さない「ば」を発音して「ぱ」に聞こえる。
- 英語のアクセントは強く読む位置に置かれ、日本語の標準語のアクセントは音の下がり目の位置で、ピッチアクセントには顕著な地域差がある。
- 全国共通語のア・イ・ウ・エ・オの5母音は安定した体系で、世界の言語の中ではありふれた母音の数である。
ひっかけ
- 母語干渉は文法面に限って現れるのではなく、母語での賞賛表現の直訳のように、表現の選び方にも現れる。
- 日本語の接続詞と英語の接続詞は、「そして」と and が翻訳できても、音声・文法・意味の側面ごとに見ればどれも同じとは言えない。
- 韓国語の敬語は日本語とよく似ているが、日本語と同じではなく、よその人に対しても身内に尊敬語を使える点が異なる。
- 日本語の発音の難しさは個人差だけで決まるのではなく、学習者の母語が意味の区別に使う音かどうかが関わる。
- 母語と関係なく客観的に評価する難しさは絶対的な難しさであり、母語に左右される相対的な難しさと取り違えない。
<39> 日本語教育のための日本語分析
日本語教育のための文法として、学校文法との違い、自他動詞や可能形の誤用の捉え方、コーパスの活用が問われる。
要点
- 学校文法は戦前の文部省編『中等文法』に連なる、国語教育のために編纂された文法書の1つで、母語話者向けのためそのまま日本語教育には使えない。
- 「文法」そのものと文法書は別で、文法書には編纂目的や対象、言語観による流儀があり、今日から見て最初の日本語文法書はロドリゲスの『日本大文典』である。
- 「書く」の活用は、学校文法では語幹「か」と語尾で説明し、日本語教育では kak- を語幹とする説明がよく行われるが、同じ事実の別の記述である。
- 可能形は意志的な動作を表す動詞でつくれ、「ピアノが部屋に入る」のように他からの働きかけによる変化だけを表す場合はつくれない。
- 「始まる」と「始める」のような有対自他動詞は日本語教育でも学習困難な項目の1つで、両者の混同が誤用になる。
- コーパスは実際に使われた言語のデータを大量に集めた電子的なデータベースで、実際によく使われるパターンを見つけるのに利用できる。
- 文は語の並べ方(統語)というヨコの軸と、位置に入る語彙のグループ(範列)というタテの軸の組み合わせでできている。
ひっかけ
- 学校文法は絶対的に正しい文法論ではなく、国語教育という目的で編纂された文法書の1つにすぎず、異なる記述の文法書が誤りというわけではない。
- 韓国語のように自他動詞の区別がある言語が母語でも誤用は見られ、自他動詞の誤用は母語の影響だけでは説明できない。
- 「無」は名詞と自由に結びつくのではなく、*無働・*無金・*無家のような語は存在せず、規則だけで新しい語の意味を予測できない。
- 位置に入る語は品詞が合えば自由に入れ替えられるのではなく、「天気」と「よくなる」のように組み合わせを自由に換えられない場合がある。
- 「書く」の2通りの説明は、一方が誤りなのでも、現代語と古典語で対象が違うのでもなく、同じ事実を異なる形で記述したものである。
<40> 音韻・音声体系
拍の数え方、促音・撥音・長音、アクセントとイントネーション、無声化や連濁など、日本語の音声体系の基本が問われる。
要点
- 拍はほぼ同じ長さの単位で、促音・撥音は1拍、長母音は2拍分、拗音は仮名2字でも1拍と数える。
- 促音はそれ自体の音を持たず、後ろの音と同じ口構えをして、無音の状態を1拍分取る。
- 長音は短母音の音質を変えずに伸ばす音で、「おう」は「おー」、「えい」は「えー」と、表記と発音がずれる。
- 撥音「ん」は後ろの音で発音が変わり、タ行・ダ行・ナ行の前では舌を上の歯の裏につけて発音する鼻音になる。
- 日本語のアクセントは単語内の音の高さの変化で、「橋」と「箸」のように語の意味が変わり、英語は強さで目立たせる。
- アクセント核が1拍目なら頭高型、最後の拍なら尾高型、途中なら中高型で、平板型と尾高型は助詞を付けると見分けられる。
- アクセント核は特殊拍に置かれず、外来語の核は普通は語末から3拍目で、その拍が特殊拍なら前の拍に移る。
- 複合名詞で後部要素が3拍・4拍の平板型か尾高型のとき、核は後部要素の1拍目に来る。
- 母音の無声化は、母音「い」「う」が無声子音に挟まれるなどして声帯の振動がなくなり、聞こえにくくなる現象である。
- 連濁は、複合語を作るときに後ろの語の最初の清音が濁音に変わる現象で、起きる語と起きない語がある。
ひっかけ
- 母音「う」は唇を丸めて前に突き出すのではなく、唇の丸めを緩め、前に突き出さないように発音する。
- 日本語の疑問文は文末にかけて少しずつ音の高さを上げるのではなく、文末の最後の拍を急に上昇させる。
- 複合名詞は前後の語のアクセント型が別々のまま保たれるのではなく、1つの名詞に核は1つしかないため型が変わる。
- 「かい(会)」の「い」は二重母音の第2要素で特殊拍に当たり、自立拍ではない。
- 全国共通語の5母音が最少ではなく、沖縄方言は3母音、宮古・八重山方言は6母音、奄美方言は7母音である。
<41> 文字と表記
現代仮名遣い・送り仮名・外来語の表記・常用漢字表・ローマ字・公用文作成の考え方など、表記の規範の内容が問われる。
要点
- 現代仮名遣いでは、助詞の「は」「へ」「を」は発音が「わ」「え」「お」でも、表記の慣習による特例として「は」「へ」「を」と書く。
- 同音の連呼や二語の連合で生じた「ぢ」「づ」は「ぢ」「づ」と書き、「地面」のように漢字の音読みがもともと濁る語は「じ」「ず」と書く。
- 送り仮名の通則1では、活用語尾の前に「か」「やか」「らか」を含む形容動詞は、その音節から送る(穏やかだ・明らかだ)。
- 送り仮名の通則3では名詞に送り仮名を付けないのが本則で(月・鳥・花・山)、辺り・勢い・互いは最後の音節を送る例外である。
- 送り仮名の通則7では、慣用が固定していると認められる複合の名詞(小包・切手・消印)に送り仮名を付けない。
- 外来語の表記の第1表は一般的に用いる仮名、第2表は原音や原つづりになるべく近く書き表そうとする場合に用いる仮名である。
- 公用文では外来語の表記は第1表を基本とし、必要に応じて第2表を用い、第1表・第2表にない表記は原則として使用しない。
- 常用漢字表の本表には字種2136字の字体・音訓・語例等を掲げ、付表には当て字や熟字訓など語の形で掲げるものを示している。
- ローマ字では撥音の「ン」を、b・m・pの前でも例外なく n と書き(新聞 shinbun)、助詞の「は」「へ」「を」は wa・e・o と書く。
- 長音で発音される語のローマ字は、母音字の上に符号を付けるほか、現代仮名遣いと同様に母音字を並べてもよい(大道具 oodougu)。
ひっかけ
- 概数は算用数字ではなく漢数字を使い、「二十余人」「数十人」のように書く。横書きの算用数字とは区別する。
- 「及び」「又は」「並びに」「若しくは」は仮名にせず漢字を使い、「しかし」「そして」「ただし」「ところが」は仮名で書く。
- 常用漢字表は表にない漢字の使用を禁じる表ではなく漢字使用の目安であり、運用では個々の事情に応じた考慮の余地がある。
- 国語に関する内閣告示は法令に基づくものではなく、「ローマ字のつづり方」も国民に対して法的拘束力を持たない。
- 実際の動作を表す「東から来る」の「来る」は仮名にせず漢字で書き、補助的な用法や形式名詞を仮名で書く場合と混同しない。
<42> 形態・語彙体系
外来語の扱い、新語の作り方、接尾辞や連濁、複合動詞、略語など、語の成り立ちと語彙の体系が問われる。
要点
- 公用文での外来語は定着度に応じて扱い、「アジェンダ→議題」のように日常使う漢語や和語に言い換える対応がある。
- 言い換え提案の星印は理解度を表し、★★★☆は定着途上でまだ何らかの手当てが必要で、★★★★は十分に定着した語と見なされる。
- 述部は漢語で重厚さや正確さを、訓読みの動詞で分かりやすさや親しみやすさを高められる(作業が進捗する→作業がはかどる)。
- 新語のうち既存の言葉を使って作られたものでは、複数の言葉を組み合わせる合成が最も多く、「タピる」はその例である。
- 新語が生まれる理由は、新しい事物の出現という社会的理由、言い換えで印象を変える心理的理由、使われ方の定着という言語的理由の三つである。
- 接尾辞「-さ」は状態の程度や様子を表し、「-み」は甘み・丸み・かゆみのように感覚を伴う特別な意味の名詞を作る。
- 連濁は、二つの語が結合して一つの語になるとき、後ろの語の最初の音が濁音になる現象である(はな+くみ→はなぐみ)。
- 統語的複合動詞は、後項動詞が始動・継続・完了などを表す限られたものに決まっていて、前項動詞との組み合わせが自由である。
- 後項動詞が補助的な働きをする複合動詞(降りしきる)は、「V1て,V2」に言い換えられないことで見分けられる。
- 意味のまとまりに分けて各グループの冒頭を取り出す略語では、ほとんどの場合に各グループ冒頭の2拍が取り出される(デジカメ・ブラバン)。
ひっかけ
- イッピキにパ行の音が現れるのは、古い発音が残りやすいからではなく、数詞「一」が日本語に入った時に子音で終わっていたためである。
- ふたが固くて開かない出来事は、他動詞「開ける」ではなく自動詞「開く」を使って「ふたが開かない」と言う。
- 語源を本来とは違うように解釈することは、類推・逆成・音位転換ではなく民間語源と呼ぶ(suite を sweet と解釈するスイート・ルーム)。
- 「エンターテーメント」の語形は英語の発音の引き写しではなく、日本語で「エイ」を「エー」と長母音に発音する傾向による。
- 「〜忘れる」「〜そこなう」「〜そびれる」は始動・完了・過剰行為ではなく、動作が行えなかったことを表す未遂の後項動詞である。
<43> 文法体系
動詞の活用と可能形、「〜ている」・授受・受身、「そうだ/ようだ/らしい」、「まで/までに」など、文法の用法の区別が問われる。
要点
- 「見れる」「出れる」「来れる」は共通語では改まった場で適当ではないとされ、本来の形は未然形に「られる」が付いた「見られる」である。
- 五段活用の動詞に「させる」を付けた「休まさせて」は適当ではなく、本来は「休ませる」。上一段の「見る」の「見させて」は文法的に問題ない。
- 可能形は、グループ1は語尾をえ段にして「る」を付け、グループ2は「られる」を付け、「来る」は「こられる」、「する」は「できる」となる。
- 「〜ている」の用法は、動作の進行・継続、結果の状態、実現・未実現、反復、経歴・記録、性質・特徴に整理できる。
- 「開いている」は事態の結果の状態を述べ、「開けている」は動作主の意志に視点が置かれ、誰かが開けてその状態を続けている意味になる。
- 経験を表すとき、「〜ことがある」は経験を相手に積極的に伝え、「〜ている」は過去の記録・経歴として示すときに使われる。
- 「言った」は言った事実を述べ、「言っていた」は言ったことを伝言として相手に届かせる、感知の視点の用法にあたる。
- 「までに」は返す・提出するのような継続しない動詞と結び付き、「まで」は待つ・働くのような一定時間継続する動詞と結び付く。
- 「らしい」は情報の取得がやや間接的で関心が中・やや小のときに使いやすく、様態「そうだ」は直接的で関心が大きいときに使う。
- 「はずだ」は話し手の経験や知識に基づく期待や確信を表し、「わけだ」はすでに起こった事実に基づく判断を表す。
ひっかけ
- 二重否定は文に重みを持たせるために積極的に用いるのではなく、どうしても必要なとき以外には使わない。
- 疑問の形で使われないのは伝聞「そうだ」であり、様態「そうだ」は疑問の形にも用いられる。
- 「くれる」は依頼や命令、意志、願望などの働きかけの表現をとれず、「手伝ってくれたい」とは言えない。
- 「それから」「そして」は因果関係を示す論理の接続詞ではなく、前後を並べてつなぐ整理の接続詞であり、原因と結果をつなぐのは「それで」である。
- 現代語の「気だ」は三人称の意志のみを表し、一人称の意志を表せる「つもりだ」と同じではない。
<44> 意味体系
慣用句の本来の意味、「思う/考える」「分かる/知る」の違い、異字同訓、語義の変化、指示詞の使い分けなど意味の捉え方が問われる。
要点
- 「気が置けない」は、辞書等で本来の意味とされてきたものでは、相手に対して気配りや遠慮をしなくてよいという意味である。
- 「ひもとく」の本来の意味は関係する書物を読むことで、「真相を明らかにする」は本来の意味とは異なる使い方である。
- 「思う」は情緒的・一時的な思考、「考える」は論理的・継続的な思考というニュアンスを持ち、「じっくり」は「考える」と合う。
- 「分かる」は不明瞭な認知状態が明瞭になることを基本とし、状態も表せるが、「知る」は一瞬の変化で知識を失うことは表せない。
- 異字同訓の「判る」は物事がそれと判別・判断される意味、「解る」は理解する意味で、「分かる」はその両方を網羅できる。
- 「とても」は、陳述副詞、不可能表現を伴う用法、程度副詞の順に用法が移り、第6期国定国語教科書に程度副詞の用法が採られた。
- 「感謝しかない」は、限定が「感謝で占められている」ことを表し、ほかの感情の入る余地がないという強さを示せる。
- コロケーションは言葉が決まって結び付く相手との関係で、語ごとに癖があり、「効果」のように年代で変わることもある。
- 「ようやく」は古くは〈次第に〉を表したが、〈ゆっくりした過程〉から〈終結〉へ変わり、今は〈やっとのことで〉の意味で使われる。
- 遠称の「あれ」は非現場指示で記憶内の対象を指し、話し手と聞き手の共有知識に使われ、「それ」は中立的で客観的に照応させる。
ひっかけ
- 「気が置けない」を、気配りや遠慮をしなくてはならないという意味にとるのは、本来の意味とは異なる方である。
- 「佳境に入る」は本来の意味が大きく上回ったのではなく、本来の意味とそうでないものの割合が拮抗している。
- 顔の区別がつかない写真で「私がどれだか」と識別を求める場面は、「知る」ではなく「分かる」を使う。
- 「役不足」は役目が不相応に軽いことで、自分の力が足りないという意味に解したものは誤りとして区別される。
- 少子高齢化の対策や期限つきの返事、「くよくよ考えるな」は「思う」でなく「考える」を使う場面である。
<45> 語用論的規範
伝え合いの四要素、公用文の文体、敬語の指針、「のだ」「いいです」「から/ので」など、場面に応じた言語使用の規範が問われる。
要点
- 伝え合いの質を高める四つの要素は、正確さ・分かりやすさ・ふさわしさ・敬意と親しさで、場面や相手の気持ちへの配慮はふさわしさにあたる。
- 専門家同士なら専門用語の方が正確に伝わるが、一般の人にそのまま示すと分かりにくくなるのは、正確さと分かりやすさの対立にあたる。
- 解説・広報等の文末は「です・ます体」を基調とし、ございますの形は用いず、申します・参りますも特別な場合を除いては使わない。
- 法令・告示・訓令は常体、通知・依頼・照会・回答など特定の相手を対象とした文書は敬体を用い、一つの文書内ではどちらかで統一する。
- 「御苦労様」はねぎらいが上位者から下位者に向けたものとなるため、目上の人に対しては用いない方が良いとされる。
- 不快感を与えない言葉遣いでは、特定の用語を避けるだけでなく読み手がどう感じるかを考え、過度に規制したり禁止したりすることは慎む。
- 「のだ」は「確かではないが、少し知っていること」を前提に、相手の誤った認識の訂正や不確かな情報を補うときに自然に働く。
- 「いいですよ」は、相手が承諾を求めている場面では承諾、相手が自分のために何かしてくれようとする場面では断りの意味になる。
- 目上の人に自分のために動作を促す「お〜ください」は厚かましい印象を与えるため、「書いていただけないでしょうか」のような言い方が選ばれる。
- 目上の店長への依頼の理由では「ので」の方が「から」より丁寧な印象を与え、初級教科書では「から」が先に提示されることが多い。
ひっかけ
- 日本語母語話者は理由を述べるとき「から」を主に使ったのではなく、I-JASのロールプレイでは「ので」しか使っていなかった。
- 「いいです」の承諾と断りは区別できないのではなく、うなずきや首を振る動作、イントネーション、場面や文脈で区別できる。
- 「お〜ください」は「〜てください」よりぞんざいな表現ではなく、より丁寧な表現である。
- 店と取引のある業者スタッフが訪れるとき、普通は「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」「おつかれさま」などと声を掛ける。
- 文末の「けど」は後ろに続く内容が明示されないと使えないのではなく、続く内容は聞き手が会話や文章の流れから判断する。
<46> 受容・理解能力
コアカリキュラム<46>受容・理解能力の到達目標と、参照枠の読む・聞くCan doの段階、読解授業の前作業や読解力の捉え方が問われる。
要点
- <46> 受容・理解能力は、学習者の読むこと・聞くことを向上させる方法を理解していることを到達目標とする。
- 受容・理解は情報を受け取る側の能力であり、読むことと聞くことがこれにあたる。
- 話すこと・書くことは<47> 言語運用能力の側にあたり、運用の側の能力として受容・理解とは区別される。
- 初級の読解教材では、日にちや値段をたずねる質問はスキャニング、内容の並べかえやタイトルを考える質問はスキミング、言いかえや表への整理はボトムアップの練習になる。
- 中級からの読解授業の前作業は、話題を示してスキーマを活性化し、理解に欠かせないキーワードに絞ってことばを確認するもので、教えすぎないことが大切とされる。
- 読解力とは、目的に合った読み方をして読む目的を達成できる能力であり、文字・語彙・文法の知識はJFスタンダードの木の根の部分に当たる。
- アナウンスを聞く尺度は、ゆっくり丁寧な指示の理解(A1)、短く簡単なメッセージの要点(A2)、普通の速さの共通語(B2)、音質の悪いアナウンスからの情報の取り出し(C1)の順に高くなる。
ひっかけ
- 話すこと・書くことは受容・理解能力ではなく運用の側の能力であり、受容・理解の組合せに入れない。
- 「手掛かりの発見と推論」のC1は未知語の大意を推測する段階ではなく、相手の態度や気持ち、意図を推測し次に来る内容を予測できる段階である。
- 【世情を把握するために読むこと】のA2は手紙やパンフレットから重要な情報を探す段階ではなく、広告・メニュー・時刻表から予測可能な特定の情報を見つける段階である。
- 話の方向性が標識で明示されれば長い話や複雑な議論も理解できるのはB2であり、C1は構造がはっきりせず関係性が暗示されるだけの長い発話も理解できる。
<47> 言語運用能力
参照枠の言語活動の分類とCan doの種類、JFスタンダードの木、全体的な尺度、会話力など、言語運用能力の枠組みが問われる。
要点
- 参照枠は言語活動を、聞く・読むの受容的、話す(発表)・書くの産出的、話す(やり取り)などの相互行為的に分けて設定している。
- 言語能力記述文(Can do)は活動・方略・テクスト・能力の4種類で、方略Can doは分からない言葉の推測、質問、聞き返しなどの行動を扱う。
- 能力Can doには、使用語彙領域・文法的正確さ・音素の把握・正書法の把握・話し言葉の流ちょうさなどのカテゴリーがある。
- JFスタンダードの木で根にあたるのは、文字・語彙・文法など日本語に関する知識であるコミュニケーション言語能力で、言語活動を支えている。
- 全体的な尺度で、身近な話題の主要点を理解し、旅行中に起こりそうな大抵の事態に対処できるとされるのはB1である。
- JFスタンダードの考え方では、会話力は会話の目的を達成する力、つまり課題遂行能力である。
- Can-doは、条件、話題・場面、対象、行動といった要素を含み、その特徴的な表現からレベルを理解できる。
ひっかけ
- 「説明書を読むこと」は能力Can doのカテゴリーではなく、活動Can doのカテゴリーの例である。
- 手紙を書いて送り受取人から返事を受ける書く活動は、産出ではなくやりとりにあたる。
- Can-doの要素は条件・話題・場面・対象・行動であり、採点の基準は要素に含まれない。
<48> 社会文化能力
<48>社会文化能力の到達目標、参照枠の社会言語能力と適切さの尺度、共通語と方言、文化の氷山モデルや大文字・小文字の文化、ステレオタイプが問われる。
要点
- 日本語の特徴である待遇表現(敬語等)は、CEFRの社会言語能力についての言及と結び付けて扱われる。
- 相手や場面に応じて共通語と方言を使い分けることも、社会言語能力の一側面として必要な能力と捉えられる。
- 文化の氷山モデルでは、文学・芸術・習慣・行動が目に見える表層文化で、価値観・考え方・意識が目に見えない深層文化である。
- 大文字の文化は文学や音楽、美術、芸術などを指し、小文字の文化は日常の習慣や行動、価値観などを指す。
- 社会言語的な適切さの尺度は、挨拶・紹介、短い社交的な会話、礼儀慣習と文化の違いの認識、場面に応じた言葉遣いの順に高くなる。
- 文化を固定的な知識として学ぶとステレオタイプを生み、誤解の原因になり、ネガティブなものは差別的な考え方のきっかけにもなる。
- 社会言語的な適切さのC1は、感情表現、間接的な示唆、冗談などを交ぜて柔軟かつ効果的に言葉を使えることで、日本語話者と自分の生活地域の言語の話者との仲介はC2に置かれる。
- <48> 社会文化能力は、日本語での社会言語的な適切さに関する知識や社会文化的知識を理解し、社会言語能力及び社会文化能力を向上させる方法を理解することを到達目標とする。
ひっかけ
- 大文字の文化は目に見えない深層文化ではなく、氷山の表層・深層とは別の視点からの分け方である。
- 日常の習慣や観察できる行動は深層文化ではなく、目に見える表層文化にあたる。
- 見えない文化を知識として十分に学べば誤解を防げるわけではなく、世界中の人の文化を知識として学ぶことには限界がある。
<49> 対人関係能力
コアカリキュラム<49>対人関係能力の到達目標と態度、教師の権威性、歩み寄りと敬意・親しさ、参照枠の社会言語的な適切さ、ロールプレイの講評が問われる。
要点
- <49> 対人関係能力は、多様な価値観を持つ関係者や学習者を取り巻くコミュニティと連携して教育実践を行うための対人関係能力を理解し、向上させることを目標とする。
- 学習者に対する態度として、指導する立場や多数派であることが学習者に権威性を感じさせると自覚し、自身のものの見方を問い直そうとする。
- 参照枠の社会言語的な適切さの尺度は、熟達した日本語話者との対人関係を維持でき、相手が日本語話者同士と違う話し方をしなくてすむ姿を描く。
- ロールプレイの講評は、対人関係を意識した談話展開や表現の選択、表情や態度を含む非言語表現など、社会言語能力や言語運用能力の視点を中心にする。
- コアカリキュラム表1の「態度」は、言語教育者としての態度、学習者に対する態度、文化多様性・社会性に対する態度の三つの群で示され、多様な関係者との連携・協力を含む。
- 歩み寄りとは、相手の知識や語彙の量、情報を処理する速さを推し測り、言い換えや話す速度を調整することで、自分を押し殺さず伝えたい内容を伝えるための準備である。
- 敬語は大切だが万能ではなく、過剰な敬語や丁寧語が相手との距離を作ることもあるため、親しさはくだけた言葉や相づち、気遣いの一言でも伝えられる。
ひっかけ
- 職場のコミュニケーションの評価では、観点別のルーブリックで細かく点数をつけるのではなく、社会言語能力などの視点を中心にフィードバックする。
- 社会言語的な適切さの目標は、熟達した日本語話者と区別がつかない話し方を身に付けることではない。
- 学習者の誤りをその場で直し続けて一貫した基準を保つのではなく、指導する立場の権威性を自覚して自分のものの見方を問い直す。
- 「態度」に、学習者の母語や出身文化に立ち入らず日本語と日本文化に専念する姿勢は示されておらず、言語・文化の相互尊重が前提である。
- 敬意と親しさへの留意は、距離をできる限り縮めることではなく、近づき過ぎず遠ざかり過ぎず互いに心地良い距離をとることである。
<50> 異文化調整能力
コアカリキュラム<50>異文化調整能力の到達目標、JFスタンダードの理念、「第3の場所」、文化の島モデルなど異文化の捉え方が問われる。
要点
- <50> 異文化調整能力は、多様な関係者と連携・協力する上で必要な異文化理解能力と、異文化接触場面における摩擦を調整するコミュニケーション能力を理解する。
- 異文化理解能力は、自分の文化を捨てることも相手に捨てさせることもせず、新しい「第3の場所」を見つけていくことが大切だと説明される。
- 誤解やミスコミュニケーションは、人がことばを自分の経験で無意識に解釈し、相手の背景にある経験や文化を知らないために生まれる。
- 文化の島モデルは、目に見える行動は違っても、目に見えない考え方や価値観に共通点があることを表す。
- 異文化理解能力の具体的な要素はJF日本語教育スタンダードにも詳しく書かれておらず、異文化間能力や異文化間コミュニケーション能力など呼び方も複数ある。
- 『まるごと 日本のことばと文化』は課題遂行能力と異文化理解能力を育てる教材で、ことばと文化を合わせて学べ、日本のことだけでなく自分自身の文化も振り返って考えられる。
ひっかけ
- JFスタンダードが相互理解のための日本語に必要とする能力は、文法や語彙の知識ではなく、課題遂行能力と異文化理解能力である。
- 異文化理解能力は、相手の文化に合わせて自分の文化を捨てることではなく、どちらかに合わせない新しい「第3の場所」を探すことである。
- 氷山モデルは見える部分と見えない部分の大きさの関係を表すもので、行動が違っても見えない部分が共通することを表すのは島モデルである。
ほかのページ
この論点の問題は、アプリで解けます
「日本語教員ウカール」は、国家資格「登録日本語教員」になるための日本語教員試験(基礎試験と、応用試験の読解)の対策アプリです。論点テキストはアプリの中の「論点で学ぶ」でも読めて、各論点の問題を解いて理解を確かめられます。応用試験の聴解(音声問題)は対象外です。
関連ページ
作り方について
この読み物は、アプリ「日本語教員ウカール」の収録問題の設問・正しい記述・解説をもとに、アプリ製薬が論点ごとに整理したものです。文部科学省の文書の転載ではありません。 問題文・選択肢は載せていません。
日本語教育能力検定試験(公益財団法人日本国際教育支援協会)とは別の試験の対策であり、同検定の対策ではありません。